東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『日日是好日』

ここ数日、覚書。

14、15日。仕事で山形県米沢市へ。嫁松の実家に行くときの新幹線の通り道ではあったけれど降りるのは初めて。駅前よりも、川を渡ってかつて城があった地域の付近の方が商店街や店が集まっている。諸々あって観光名所的なところをいくつかまわった。堂森善光寺から上ることが出来る月見平と呼ばれる小高い山からは、米沢の町が一望出来る。夕暮れのその場所から町を日が沈むまで眺めていた。空が広い。雲がゆっくると動いているのが判る。日が暮れていくにつれて、町の灯りが少しずつ灯っていく。そういうことを実感出来るのは贅沢な時間の様な気がする。朝晩の冷え込みはきつかった。夜に町を歩いたとき、ひんやんりとした空気が北国のそれで、なんとなく帯広にいた頃のことを思い出した。なんだろう、東京の冬の寒さとは違う、気がする。


16日。仕事が終ってから、鬼子母神へ行く。『御会式』で盛り上がる境内を歩く。屋台の数は夏の盆踊りのときの倍以上あるのではないか。屋台で出ていた飴細工職人の方の技にしばし見とれる。上下に揺り動かされる万灯。繰り返される手太鼓のリズム。そのリズムを聞いて、読み終えたばかりの色川武大さんの『狂人日記』のことを考えずにはいられない。主人公である男の中に響く音は、かつて聞いた祭り囃子であった。彼の中にある『孤絶』。その言葉を初めて知ったのだけど、なんて絶望的な響きを持った言葉なのだろうと思う。『御会式』は、『孤絶』とは無関係に賑やかだったのだけれども。


17日。ぶらりと新宿へ。冨永昌敬監督の『パンドラの匣』を観る。青春ラブストーリー。とはいっても、そこは冨永監督独自の切り取り方でもって、なんというか、すごくかっこいい作品になっている。たまたま、終映後に冨永監督と音楽監督菊地成孔さんのアフタートークがある回だった。もちろん、映画用に書き下ろされた楽曲もあるのだけど、使用されている音源のいくつかが、菊地さんが所属されているレーベルの過去の音源から抜き出して、それをいじったものだそうで、そういう試みなどすごく『攻めてる』感じがする。『シャーリーの好色人生/転落人生』より以前は、映画の中で行なわれている出来事/行為を俯瞰してみているような印象だったのだけど、『転落人生』や『パンドラの匣』はもっと目線が低くなっているというか、焦点が人物に向けられている様な印象がある。原作が読みたくなるのだけど、本屋で見つけることができない。


18日。朝起きて掃除、洗濯。昼に少しでかける。買い物ついでに池袋のビレッジバンガード鈴木翁二さんの『オートバイ少女』を購入。3時間ほどしてから家に戻ると猛烈に眠くなり昼寝。起きるとすっかり日が暮れている。と、外から祭り囃子。音につられて外へ。明治通りを『御会式』の行列が目白方面へ連なっている。とてつもなく大きい万灯の担ぎ手は、きっとその町内の中でも選ばれた人なのだと思う。揺らすことでクラゲのように見える万灯は圧巻。ただ持つだけでも大変なそれをあえて揺らす。周りはそれを煽る。なんなんだろう、あの高揚感。


鈴木翁二さんの『オートバイ少女』。なぜ今までこの漫画家の存在を知らなかったのだろう。またとても魅力的な作品に出会えた