東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『月がきれい』

tokyomoon2011-09-16

戊井昭人さんの『俳優 亀岡拓次』読了。映画俳優が主人公の作品。作中でしばしば描かれる撮影現場の混沌とした状況の、しんどいなそれ、と思うもののそれでもなおかつ映画製作に魅力を感じるのは、映画づくりの面白さがあるからなのだろうとも思いつつ。主人公の俳優の、良い意味での『熱しやすく冷めやすい』性格は、どこか流浪の生き様を思わせる。それは映画製作そのもののメタファーのよう。


家に帰っては、缶ビール片手に映画を観ている。

山下敦弘『どんでん生活』
アン・リーラスト、コーション

ラスト、コーション』で、印象に残ったのは正面から見据えるショットにおける切り返し。必然として、目線の先にあるカメラが対象ということになりつつ、さらにその視線はスクリーンを通り越して(とはいってもDVDだとテレビ越しだけど)、僕たちを見据える。トニーレオンの視線は、レンズを経て、スクリーンを通り越して、こちらをドキッとさせる魅力がある。正面からの画を選択したことには、あの役者の視線の力を最大限に発揮させようとする製作者の意図があるのではと思う。




ここ数日の、夜の月明かりのぐあいはなんて素敵なのだろう。名月なんて言葉もない時代、空の彼方に光る丸いものによって空があれだけ明るくなれば、これは見上げる以外に手はなかろうとも思う。今でさえ。


すごく楽しかった夜の、すべてが終ったあとの、淋しい余韻を思わせる音楽と映像。愛おしければ愛おしいほど、淋しいけれど、その淋しさに浸ることのよろこびもある。