東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『呆然のピナ』

25日(火)。この日を密かに待ち望んでいたのは、東京国際映画祭にてヴィム・ヴェンダース監督の『ピナ』が上映される日であったから。観たい。いかんせん上映は14時からの1回限り。仕事だ。しかし、いろいろあれして、私は14時に六本木ヒルズの、映画館の受付前にいた。奇跡は願うところに叶うのかと思われたが、受付にて目撃した文字は、

「完売」

そりゃそうか。そうだよな。1回限りしかやらぬ上映で、ヴェンダースで、ピナ・パウシュで、さらに3Dとあっちゃあ、そりゃ売り切れるわ。しかも上映時間ちょうどに受付くるようじゃ。ダメもとで受付の人に「あの、ピナは」と聞いたものの、「あ、もう完売で」と醒めた声調で返されるわな。甘くねぇ。世の中の甘くなさにぼんやりして、思わずTシャツ一枚でヒルズをうろつく私です。暑かったし。


会社に戻ろうかと思ったものの、このまま六本木を後にするのも癪だなという気もし、森美術館で行われているメタボリズムの未来都市展に行く。戦後の日本で起った理想の都市を作ろうと試みる建築運動『メタボリズム』。広島ピースセンターから始まり、実現されたもの/されないもののプランがCGや図面などから見れる。

かたっくるしい「かっこいい」ではなく、「かっけえ」くらいのワクワク感がある。なんだ、この未来建築。本当にこんな都市が実現していたら、と胸躍る。なにせ海上に浮かぶ都市や、空に浮くかのように設計される空中都市だ。しかも設計図を作って、本気でそれは準備された。
《東京計画1960》の東京湾を埋め尽くす海上都市や、新宿駅前の群造形に素直に圧倒されました。
興味深いのは、戦後のそういった建築運動のスタートとなっているのが広島の平和記念資料館や基町のアパート群であること。まさに終戦後の焼け野原から、復興と共に日本の未来を建築から考える運動としてあった『メタボリズム』。
単なる夢物語ではなく、そこに思想があったのだと思う。いわゆる再開発的な発想とは明らかに異なるスケールがある。

『ピナ』が観れなかった残念感も、吹っ切れた。すごく刺激的。