東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『長回しの映画』

tokyomoon2015-05-08

昨日、目が覚めると雨の匂いがした。少し意識すると雨音もする。静かにポツポツ降っていた。窓を少し開けて寝ていたので、その雨の匂いが部屋にも入ってきた。


娘に雨が降ってたねというと、雨の匂いは嫌いと真逆のことをいうので、どうしてかと尋ねると「臭い」と返事。じゃあ何が好きなのと聞くと「風の匂い」というけれど、それは具体的になんの匂いと聞くと、もう面倒くさそうにして答えてくれなかった。


とある短編映画を観た。20分ほどの中学生がメインの話。適度に距離感を持ったカメラや演出で、押し付けてくるようなところがなく、とても面白かった。カメラワークもとても良い。教室でテストを受けるシーンがあるのだけど、それが強いなにかノイズがかった雨の音から始まる。それからテストを受けて、終了後に主人公たちが雨の田舎道でやりとりをするシーンがある。台本上の設定で雨ではなかった。おそらくロケ日程で雨が降ってしまい、やむおえず雨活かしのシーンに切り替えたのだと思うけど、それがその後の不幸な展開をやんわりと予想させて効果を発揮していた。あまりに素敵な作品だったので、監督さんに雨の音が効いてましたと感想を伝えると、実は教室のシーンは、田舎道の場面がロケ日に雨が降ってしまったので、つなげるために合成などいろいろ駆使して教室の窓の外に雨を降らせて、雨音も後から足したのだという。その分、こだわって作ったシーンだったよう。気づかなかった。てっきりその日一日、雨が降っていたのかと思った。


CGをどーんと派手に使う映画もあるけれど、気づかないようにさりげなく使っているCGの方が僕は好き。それにしても面白い短編だった。


それとは別に昨日とある監督の新作の試写を拝見させてもらう。これも仕事の役得だなぁと思う。その監督の映画作品を拝見したことがなく、今回が初めて。振り返ってみると手持ちがなかったのではないか。序盤からワンカット長回しで進行するシーンがポツポツでてくる。そしてクライマックスのシーンが、とても長いワンカット。基本的に芝居場は日本家屋の中。日本家屋の連なる部屋の作りを利用して、勝手口、居間、寝室とカメラが移動していき、役者もその中で芝居が進行していく。役者の動きに合わせてカメラが動いたり、カメラに合わせて役者が動いたり、それが見事。そして、縁側の向こうでたくさんの大人たちがワチャワチャと動くシーンがあるのだけど、そのワチャワチャが、カメラから遠くで見える姿が哀れなほど滑稽で、その滑稽さを確実に「敢えて」狙っていることも含めてそのワンカットの中で進行していくシーンがとても印象に残った。もしかしたらその作品が、舞台で上演された作品を原作にしているからそのような撮り方をしたのかもしれない。ああ、なんて面白いんだろう。そのシーンだけでももう一回観たい。