東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『光合成』

先日、ラジオで田中泯さんがゲスト出演されている番組を聴いた。舞踏家としてのお考えを語る言葉の中に、身体は『生まれて初めてであった場所』であり、脳の発達よりも前に存在するもので『そこから人間が形成される』ものではないか、ということをおっしゃっていて、体調が優れない、気分が落ち込む、音楽を聞いて身体が動き出す、など、あらゆることは身体がまず反応する、『身体が一番正直なもの』なのだということを語っており、その言葉がとても印象に残った。


僕自身、舞踏について特に知識もなければ観る機会もあまりなく、縁遠いものなのですが、そういった田中泯さんの言葉は舞踏に限らず根本的な人の生き方として必要な意識なのだなぁと思い、そこで紹介していた原美術館で展示されている写真家田原桂一さんが田中泯さんとコラボした『光合成』(http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html)という展示を見に行った。30代の頃の田中泯さんの身体を切り取った写真の数々。色彩を極力抑えたモノクロのような写真の中で、多分田中泯さん自身の身体も何かしら塗っているように見えるのだけど、何か田中泯さんの身体が、大木の幹のようなうねりを想像させて、それが『光合成』というタイトルを与えたのかなぁと勝手に想像する。


筋力トレーニングによって異様に鍛えられた身体とも異なりつつも、引き締まった田中泯さんの身体は、舞踏という『生まれてはじめてであった場所』を、剥き出しのそのものをさらけだして踊りつづけてたどり着いた形であって、そのうねりをそのまま切り取った写真の数々は、大地に根をはり空へ空へと伸びていく大木を見るような気にさせる。


だから、2016年に再び撮った田中泯さんの身体は、30代の頃の張りやたくましさが少し喪われていたとしても、歳を重ねた深みを感じさせる。


そして、原美術館そのものも良かった。展示室はほどよく小さく、サクサクと観てまわれる。常設展示の作品も、展示室の空間に沿って作られたようだし、どこか柔らかい丸みのある作りの建物やビルの合間にポツンとあるように思える中庭もなんだか、ホッと落ち着く広さだった。


快晴だと気持ちいい日々。寒さもまた気持ちいい。