東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『快晴の日曜/ブルーバレンタイン』

日曜。朝、快晴。晴れるのはいい。それはすごく良いのだけど、ほんと体調崩すよ。この寒暖差。それはそれとして、洗濯をし、掃除機をかけ、布団を干した。太陽は思いっきり活用する。久しぶりに布団を干せて、清々しい。

それから仕事へ。日比谷のあたりに出かけて、少しだけ時間に余裕があったので、日比谷公園へ。快晴で気持ちがいいせいか、多くの人がいた。大きな黄色い公孫樹の木と、青い空が良い具合。公園の中を、ご年配のご夫婦が寄り添って歩いているのが印象に残った。その後、少しばかり仕事いろいろ。夕方、日が傾くちょっと前に地下鉄に乗る。地下鉄から地上に出たときに、真っ暗でまだ地下鉄を走っているのかと思った。

夜、すっかり遅くなってから池袋まで戻って、喫茶店でメールを打ったりする。一息ついてから、たまたまいただいた『東京人』という雑誌を読む。映画「男はつらいよ」の最新作に合わせた特集で、監督のインタビューもあれば、これまでのスタッフの方のインタビューもあり、読み応え十分。普段、あまり縁のない、葛飾区や金町などの土地についての話などもいろいろあり、映画の作品以外のところにも興味深い記事をいくつも読む。実は、「男はつらいよ」という作品自体、ほとんと拝見したことがなく、不勉強だなぁと思いつつ、こういう特集を読むと、勉強しなければなぁと思う。

家に帰ってから、映画。久しぶりに『ブルーバレンタイン』を観る。冒頭、娘が飼い犬の名を呼ぶところから始まる。普通の家庭の朝の風景に見えつつも、夫と妻のやりとりに微妙なすれ違いが見えるような気がする。決定的な何か、ドラマチックなことはない。もちろん、飼い犬に不幸があり、妻の元カレと突然出会ったり、妻の働く職場で異動の提案があったりと、映画の中で進行形で動く2日の間に起こることとしては、確かに多くの出来事はあるのかもしれないけれど。二人の出会いから結婚までを描く回想シーンの色鮮やかさ、幸福な瞬間と二人で生きていこうと誓う描写は、どこにも現代の二人の状況を暗示するような場面はない。雨上がりのバスの中で、七色の虹がかかる中、再会する二人の描写。夜の街かどでウクレレに合わせて唄い踊る場面の描写。レコードを聴きながら、部屋で愛を誓う場面。いずれも本当に幸福そのもの。それが結婚後、具体的な年数の記載は確かなかったけれど、娘が育っている描写から想像すると5~7年ほどか。すっかり老けて、二人の関係性の中に、なんとも言えない溝ができてしまった。かつての幸福からすると想像もできない。どのように撮影したのかは不明だけど、明らかに頭髪が薄くなった夫は、ひとめぼれだった妻に対して、老けた姿を隠そうともしない。回想シーンでは、こまかに見た目を気にし、髪型もチェックするケアをしている。それでも家族への愛は言葉にする。家族との生活が一番であることを訴える。妻は妻で、夫の才能を信じているし、何かもっと頑張ってほしいと希望を言葉にする。それでも、彼らの中には修復不可能な溝ができてしまっていて、それは何をどうしても直しようがないところまできている。「未来ルーム」と呼ばれるモーテルの部屋に入り、なんとか関係を維持しようと試みるが、色鮮やかな回想から戻ってきたとき、モーテルのライティングで、表情全体が暗い青でおおわれる二人の表情は、もう塗りなおしのきかない色合いをしている。映画のラスト、出ていく夫の奥で、打ち上げ花火が鳴り響くが、色鮮やかな花火を映すことはせずに、道路の奥には先が見えないほどの煙で充たされ、ただ、花火の鳴る音だけがノイズのように響き、映画は閉じられる。そして、エンドクレジットは、加工された色鮮やかな花火と共に、幸福な二人のスチールで締めくくられる。過去はどこまでも色鮮やかだ。せめて、過去もまた彼らには確かに存在した幸福で、過去は無くなるものではないし、それが花火のようにはかなく消えてしまうものだとしても、二人が愛し合った事実は間違いなく存在したのだと、信じつつ、今と向き合い、先の見えない道を進む二人の、それぞれの幸福を想像したい。