東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『病院ばかり』

早朝、まだ暗い時間に母が部屋に来る。胸がバクバクして辛い。話すことも苦しいという。それでいろいろ話したが、救急車を呼んでくれというので、呼ぶ。

住所、年齢、症状を説明し、保険証やお薬手帳などを用意する。思いの外、早く救急車は来く。寝巻きから着替えた母は、救急隊が持ってきてくれた移動用のベットを歩けるからと断ったが、「持ってきたんで」と言われて、仕方がなく横になった。救急車の中でさらに血圧などを測り、引受先の病院が決まったようでそこへ移動。あっという間に病院へ着いたが、まずはPCR検査をしないと入れられないということで、鼻の奥の粘膜を綿棒で取るタイプの検査をする。救急隊の方がしきりに「コウゲンケンサ」というが、最初よくわからなかった。そういう言葉はあるのだろうか。検査を救急車の中で待つ時間がやけに長く、その間に、車内に蚊が1匹入ってきて、それがぶんぶんと飛んでいた。エラーがでてしまい、もう一度検査しますと再び、母の鼻に綿棒を入れていたが、エラーってどういうことなのだろう。それもよくわからない。ようやく検査結果が出て、病院に入れた頃にはすっかり日が上っていた。それでもまだ4時半。ただ、明け方は少しひんやりしていた。

僕は入り口近くのシートで待つようにと言われて、そこでぼーっと待っていた。さすがに頭が回っていない。緊急の方かわからない病院スタッフの方が2枚ほどウロウロしている。朝の4時半に仕事なのだろうか。そうこうしていると救急車の音が聞こえる、もう一人、搬送されてきた。僕よりは若く見える男性の方。呼吸がかなり荒い。付き添いの方はおそらく母親だろうか、年配の女性。男性用のサンダルを持って、シートに座って、どこかへ電話をかけていた。

少し眠れるかと思い目を閉じるけれどさすがに眠れない。と、しばらくしてから母が降りてきた。検査結果の用紙を一枚持っていた。付き添ってきてくれた看護師の方から、受付が閉まっているので、受付の開いてる日中に会計をしにくるように指示を受ける。預かり金として一万円を渡す。つまり、さらに費用が掛かっているのだろうが具体的にいくらかかっているのかわからない。朝6時過ぎくらいだった。病院からタクシーを呼ぶ。タクシーを待ってる間に先程のもう一人の緊急で搬送された男性の身内の方なのか二名、現れて、母親と思われる方と話をしている。

何事もなかったようにタクシーを待つ母と、少しだけ、僕はなんとも言えない気持ちになっていた。

タクシーで家に戻る。本当なら、今日、つまり月曜の朝は、元々予約していた病院の予約があった。心臓のバクバクとは違うものだが、緊急の対応をしてくれた先生にそのことを伝えると、「じゃあ、ご予約があると思うので」とあっさり帰された。9時半までに病院の受付に行けばいいので、まだ少し時間があり、少し休んだら?と母に言ったが、母はもう寝れないというので僕だけ少し寝る。

朝、バスで移動し、予約をしていた病院へ。入り口に入る前に体温を測り、「最近、PCRを受けましたか?」と聞かれたので、「今朝、緊急で病院へ行き、そこで検査を受けた」と話すと、外で待って欲しいと言われて、パイプ椅子を渡されて外で待つ。「うまくいかないね」と母が言う。しばらくしてから病院へ入れて、受付をした。10時から診断のはずが、診断で呼ばれたのは11時半過ぎだった。状況をいろいろ話したのち、軽く手を診たりした後、じゃあ検査するんで、と、血液検査や採尿をするという。同じことを今朝やった旨を伝えて、その数値が書いてある用紙を見せるが、「専門的な分析があるから」と予定通り検査はするという。胸のバクバクがすることについて質問すると、「私は心臓病の専門じゃないので」と言われる。その後、検査をし、また検査結果は来週に報告しますと言われ、受付で会計を待たされて、病院を出たのは13:30。

僕だって、病院にかかることはあるし、頼らなきゃならないことはあるが、病院でできることと出来ないことははっきりとある。そのことをつくづく感じ、僕自身は出来る限り、病院には行きたくないと思う。

申し訳ないが、早朝から終始イライラしていた。万が一を考えれば、本人が希望するわけだし、心臓の鼓動が早いと言うので、救急を呼ばざるえない。その前に、何度か、「本当に呼ぶのか」と確認もした。それでも、最終的には本人の希望だ。他にも、いくつか色々なことで、これはどうか、と、提案するが、自分の気持ちが先に出てくる。それも飲み込むしかないが、その結果が、どうも、良い方向に向かわない。

付き添うことで出来ることは、それほどない。荷物持ったら、話を聞くだけだ。あとは、自分ならこうするが、という提案くらい。

病院が終わり、仕事の打ち合わせなどをする。それから移動し、仕事へ。夏の空のような気持ち良さで、もこもこの入道雲が見えた。天気予報では夕方以降、天気が崩れると言う。本当にそうなのかと不思議に思いつつ、空を見る。

仕事を終えて、閉店間際のドラッグストアで嫁と話をして、「救心」を買って渡してみたらと言われたので、それを買う。ギリギリセーフ。なんやかんや言ってもさすがに心配なので夜、実家へ。相変わらず、母はあまり眠れなそうだが、昨晩よりは落ち着いていると言う。「救心」買ってみたから、もし何か心臓が心配なったら飲んでみたら、と提案する。「飲んだことないから」と言う。まぁ、そりゃそうだろう。本人の気持ちはわかる。ただそこでも、自分の我を通すなら、と、またいろいろと思ってしまう。

どうも良くない。うまくいかない。早めに寝室へ行く。雷が遠くで鳴っていた。雨は降っていたようだけど、さらにもう少し雨が降るようだ。長い一日。