東京から月まで

東京在住。猫と日常。日々のことなど。

『人のことをよく見る』

祝日明け、気温が36℃に上がるとの報道。場所によっては37℃に上がるという。それ、体温だなぁ。異常だなぁ。驚くなぁと思いつつ、職場で室内作業だと幸か不幸か、空調が効いている場所にいるのであまり実感がない。

まだ若い俳優を目指す人たちとすこしばかり関わる時間があった。及ばずながら自分なりに演技についてアドバイスをする。その参考として、深田晃司監督の映画『ほとりの朔子』の一部のシーンの台詞を文字に起こし、演じてもらう。改めて、主演の二階堂ふみさん太賀さんの演技は素晴らしい。『ほとりの朔子』出演時はどちらも20代前半。監督の意図を踏まえて作品世界を作る。古館寛治さんや鶴田真由さんの演技ももちろんだけれども若い二人の演技の魅力が作品の軸になっていると思う。台本に起こして、文面だけで見ると結構感情の上下があるようにも感じる。実際、演技をしようとする若い俳優たちは喜怒哀楽をはっきりと表現しようとしていた。その演技の動画を撮りつつ、見返しをして、少しコメントをしつつ話をする。それから、映画を実際に観てもらう。もちろん、監督がOKを出した二階堂さんや太賀さんの演技はある意味では当然正解。でも、絶対にその演技をしなければいけないわけではない。それぞれの役柄へのアプローチはある。ただ、実はそこまで喜怒哀楽を表にださなくても伝わる何かがある。演じようとすることがすべてではなく、そこに「存在する」ことを意識してもらえたらと思いつつ、いろいろと意見を伝える。そして、映画を観終わったあと、感想を聞くと「不思議な印象だった」と語る若者たちが多い。若い俳優たちは深田監督のことも『ほとりの朔子』も知らなかった。まだ20代前半くらいならば、映画に関しても見聞はまだそれほどではないだろう。もちろん、映画やドラマの好みはあるだろうから、そこを強要するつもりはない。ただ、俳優を志すうえではいろいろな映画を観て触れる方がいい。ここから少しでも興味を持ってもらえれば、と思う。

それにしても、演技を見て、そのお芝居について話をすることは本当に疲れる。そもそも自分の意見が本当に参考になるのか疑問もある。私的な感想におさまらないように、できる限り否定的にならずに、一意見として演技についてアドバイスをするということを心がけつつ。それでなんだか頭がすごく疲れた。で、なんだかプールに行きたくなり、職場近くの区民プールへ行く。久しぶり。結構な人がいる。なんにも考えずに泳いだり歩いたり。1時間ほど泳いで外にでると、全身、程よい疲れが。コロナの影響でドライヤーが置いておらず、髪が濡れたまま、渋谷の街を歩く。家に帰ると、ドッと疲れが出て、いつの間にかリビングで寝ていた。扇風機はまわしていたけど、だいぶ暑くて汗をかいていた。

今日、気温は昨日と変わらず高いが、夕立のような雨が降るという予報。まったくどうなっているんだ、天気。で、今日は今日で別のワークショップがある。感情を作って演技をするということを否定するつもりはないが、そればかりではないと考えている。もちろん技術だけで成立するとは思わないけれど。まずは頭で演技を想像する。イマジネーション。そのためには様々な経験、見聞が必要だと思う。そして想像した演技を具現化する。どのように身体に落とし込むか。それは自分の身体を理解しつつ、ある種の技術も必要。どれほど自分のことを理解できているか。若い俳優を志す人たちはそういったワークショップからどういう刺激を受けることができただろうか。

その後、ワークショップの講師の人たちといろいろ話をした時、一つ面白い話を聞く。他者の皺を見て刺激を受ける脳があるらしい。皺の動きに刺激を受けて反応する脳。つまり人の顔をじっくりと見なければならない。メールでのやりとりや、目を見ずに行うコミュニケーションばかりが増えるとその脳は刺激を受けず、退化してしまうという。まぁ、諸説あるのだろうけれど。だけど、なんだかわかる気がする。人の目を見る、表情を見ることは確かに疲れる。だけどそれはやはり刺激的だし、面白い。だから僕はなんにせよ人の顔をじーっと観るのだと思う。そして、何よりお芝居が好きだ。

とはいえ、歳を重ねて、スタミナもなくなってきており、じっくり観るのも体力が消耗する。なので、今日もクタクタ。夜になって事務所を出ると雨が降った後が。ニュースを見ると、実家の近くも大雨、ゲリラ豪雨があったらしく、心配になり電話をかけてみると、母親があっけらかんと、「うちの周りは大丈夫だった」という。まぁ、大丈夫なら幸いだ。雨上がり、とはいえ、まだまだ蒸し暑い。